580。
これ、何の数字だか分かりますか?
ちなみに91年当時は「29」だったのですが、2007年までにこんなにまで増えました。
正解は「学士号」の種類です。
いやぁ、驚きました。まさかここまで増えているとは。
学士号急増580種 文科省、ルール化検討へ
《新聞記事:朝日新聞:11月4日付け》
1991年の大学設置基準の大綱化までは学士号は29種類と決まっていたわけですが、大綱化を機に専攻名の縛りがなくなり、それ以降際限なく増えてきてしまっているというわけです。
記事は:
「カルチュラル・マネジメント学」「情報アーキテクチャ学」「人間環境マネジメント」――。いずれも大学の学部を卒業すると得られる学士号の専攻名だ。その数は少なくとも580で、6割は全国で一つしかない。文部科学相の諮問機関、中央教育審議会などは「名前から何を学んだのか分かりにくく問題だ」などと指摘。文科省は専攻名がこれ以上むやみに増えないよう一定のルールを設ける検討を始めた。
専攻名が急増したきっかけは、91年の大学設置基準の大綱化だ。文学士や法学士など29に限られていた専攻名の縛りがなくなった。折しも少子化が進み、各大学は受験生を集めようと新しい学部や学科を次々と設置。カタカナを使った長い名前も多く出現し、それを専攻名に使うケースが増えた。
00年開学の公立はこだて未来大(北海道函館市)のシステム情報科学部には情報アーキテクチャ学科がある。卒業すると、学科の名前そのままの専攻名が付いた学士号が与えられる。担当者は「コンピューター技術を用いて新しいメディアを提供する情報手段の構築者を『情報アーキテクト』と名付けた」と話す。
しかし、最近、こうした専攻名を問題視する意見が目立ってきた。大学評価・学位授与機構の濱中義隆准教授は「各大学が特色を出そうと工夫するのはいいが、社会や受験生がそこで何を学べるのか分からない専攻名は問題だ」と話す。
中教審は現在、全国唯一の専攻名を使う場合は、設置申請の際に既存の専攻名との違いを大学に説明させることなどを、文科省の役割に位置づけるよう提言することを目指して議論している。ただ、自主性を重んじる大学の学問領域にかかわる問題だけに、国によるルール作りに慎重な意見もある。同じ理由で、現状から数を減らす議論には至っていない。文科省は、日本学術会議や各学会とも連携してルール作りに取り組む方向で検討を始めた。
結局のところ、新設学部学科の独自性を打ち出すために専攻名をそのまま学士号として使っているというところに帰結するようです。
欧米の例がすべて良いとは限りませんが、欧米では学士号は「Bachelor of Arts(B.A.)」と「Bachelor of Science(B.Sc.)」の2種類が原則のはずです。ただ、この使い方そのものも微妙に国や学問分野、大学によって違っているので、日本と事情は似ているところもありますが、大抵は「B.A.」が「学士課程教育修了の証」になっているわけです。
日本の場合も、今でこそ「なんでもあり」な状況になっていますが、そもそもの自由化の意図は、戦前の名残で「学部段階で専門学問領域について教授する」という発想で成立していた学部の権威を表現していた「○○学士」全29種類を、アメリカ型の「一般教育を基調とする学士課程教育」へと学部の位置づけ再設定するための「学士(●●)」だったはずです。
とはいえ、政策担当者や当初の意図よりも「現実の要請」のほうが強力らしく、今の状況になってしまったようです。
「誰が悪いのか」や「この現象が良いのか悪いのか」の判断を下すことはなかなか難しいですが、大学人の「識見の高さ」を感じるのは難しいですね。
最後は国に頼らなければいけない状況になりつつあるというのも「大学/学問の自治」を標榜していることを考えると、ちょっと悲しいです。
【今日(11月5日)は何の日】
坂上田村麻呂を征夷大将軍に補任(797)、イギリスで名誉革命始まる(1688)、東京・神田旅籠町に伊勢屋丹治呉服店(現在の伊勢丹)が開業(1886)、パリの自由の女神像の除幕式(1889)
【今日が誕生日】
石川一郎(1885)、猪木正道(1914)、アート・ガーファンクル(1942)
【今日が忌日】
狩野元信(1559)、本居宣長(1801)、清浦奎吾(1942)
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