専門職大学院 生き残りへ…問われる教育の質 専攻の4割定員割れ
《新聞記事:東京新聞1月12日付け》
専門職大学院は、現行の修士課程に対置する形で2003年に始まった新しい大学院制度です。
これまでの修士課程大学院とは異なり「高度な専門職を養成する」ことをその目的とし、当該専門職の認証評価機関から5年に一度の適格認証を受けることが義務付けられています。
さて、その専門職大学院が認証評価を受ける前から、さっそく危機に直面しているようです。
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高度な専門的知識を身に付けた職業人の養成を目的に、二〇〇六年四月までに開設した国公私立と株式会社立の「専門職大学院」四十九校計六十六専攻(法科大学院を除く)のうち、約四割に当たる二十五専攻が定員割れになっていることが十二日、文部科学省の調査で分かった。
募集人員の半数に達していないのも七専攻あった上、分野による定員充足率のばらつきもあり、文科省は「要件が整っていれば設置を認可するが、設置目的や教育内容の質が社会の要請に応えられなければ生き残りは難しい」と指摘している。
定員割れだった専攻数は、分野別に見るとビジネス・技術経営(MOT)が二十八専攻のうち九専攻(32%)、会計が十四専攻のうち四専攻(29%)、公共政策が七専攻のうち二専攻(29%)。一方、公共衛生や知的財産、原子力、映画、ファッションなど「その他の分野」は計十七専攻のうち十専攻(59%)が定員を満たしていなかった。
定員充足率が50%未満の七専攻のうち、その他の分野が五専攻を占め、ビジネス・MOT、公共政策がそれぞれ一専攻ずつだった。充足率75−99%は十三専攻、50−74%は五専攻だった。
志願倍率で見た場合、一倍未満だったのは定員割れの専攻数より八つ少ない十七専攻だったことから、文科省は「大学院側も単に定員確保に走るのではなく、一定のレベルに達しない学生は入学させないという意識もうかがえる」と分析する。
六十六専攻の学生数は計約六千人。ビジネス・MOTの計約千七百人のうち90%を社会人が占めた。約半数が三十代で、現在の仕事やキャリアアップに結び付く専門的知識を求める傾向を示した。一方、会計などそれ以外の分野では社会人の割合は31−43%にとどまり、資格取得や修了後に就職を目指す人が中心の二十代が半数以上だった。
品質に差あり当然
大学院改革に詳しい立川涼・元高知大学長(環境化学)の話 専門職大学院の中には本来の趣旨と異なり、単に資格取得だけを目指す専門学校と変わらないカリキュラムを組んでいるところもある。教育の品質という面で大きな差があり、定員割れの専攻が生まれるのは当然の結果だ。今後は淘汰(とうた)される大学院も出てくるだろうから、学生はよく吟味して入学先を決める必要がある。高等教育の改革は重要なのに、国の設置基準はルーズ。一定の教育水準を保つ仕組みを考えなければ、専門職大学院という制度そのものが存在意義を失ってしまう。
<専門職大学院> 会計士や弁理士、製品の研究開発技術者など高い専門性が求められる仕事を担う人材の育成を目指す大学院。従来の大学院のような学術的な研究に加え、社会で実践する知識や技術を学ぶ教育内容になっている。実務経験者を教員として配置するのが特徴で、中教審の提言を受け、2003年度にスタートした。標準修業年限は2年。司法試験制度改革に伴う法科大学院や、08年度からスタートする教職員大学院も専門職大学院の一種。
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今回の定員割れ、ちょっと考えるだけでも、すぐに原因のいくつかが思いつきます。
1)従来よりも簡単な設置認可。
2)「専門職」市場の予測の低さ。
3)「バスに乗り遅れるな(専門職大学院を作り遅れるな)」の安易な姿勢。
などなど。
とはいえ、この事実は、一方で良い傾向かなとも思っています。
それはなぜかと言えば
「大学も、気を抜くと潰れることがある」
という事実を厳然と突き付けてくれているからです。
もはや「大学全入時代」と言われ、いつ大学が倒産してもおかしくない時代になってきています。
大学本体を「本業」とするのであれば、いわば専門職大学院は「多角化事業」と言えるでしょう。
本業は過去の蓄積や取引実績があるため、まだ体力がありますが、勢いで進出した多角化事業には、ノウハウも十分ではないため、本気で取り組まない限り、傷を深くするだけでしょう。
とはいえ、そこで「退く」決断ができるかどうか。
大学「経営者」としての、冷静な判断が求められつつあります。
【今日(1月14日)は何の日】
カサブランカ会談(1943)、マリリン・モンローが元プロ野球選手のジョー・ディマジオと結婚(1954)、第三次佐藤栄作内閣が成立(1970)
【今日が誕生日】
狩野探幽(1602)、永田鉄山(1884)、福田赳夫(1905)、三島由紀夫(1925)、細川護熙(1938)、田中眞紀子(1944)
【今日が忌日】
高倉天皇(1181)、徳川光圀(1701)、高島秋帆(1866)、アンソニー・イーデン(1977)
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