2008年03月24日

設置者は国、ですよね?

【今日のディナー】
イル・ギオットーネ(東京ビル)
丁寧な仕事、体に優しい味付け、記憶に残る味。満足でした。
★★★★☆


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あと1週間で4月、いよいよ新学期が近づいてきました。


昨年、入学後に問題になったのが「はしか」です。
予防注射をしていない学生から徐々に感染が広まり、ついには大学単位で閉鎖になるところが相次ぎ・・・


さて、そして今年です。


義塾では「かかりつけ医師と相談し,入学前にワクチン接種を受けることをお勧めします。4月の定期健康診断時に確認します」となっています。
 ・学内における麻疹などの集団感染予防についてご協力のお願い(保健管理センター)

ちなみに、定期健康診断に学校保健法に基づいて年1回実施するものだとは漠然と知っていましたが、慶應義塾大学学則第179条にも「学生は毎年健康診断を受けなければならない」と定められているとは知りませんでした。
しかも「未受診の場合には,「体育実技」の履修,「健康診断証明書」の発行,および「学割証」の発行はできません」だなんて。
 ・平成20年度 学生定期健康診断のお知らせ(保健管理センター)

他校の対応例:
・早稲田:自主接種
・上智:自主接種
・明治:抗体検査を実施(2000円、在学生向け)
・法政:自主接種
・青山学院:とくになし


まぁ、私学としてどこまでの事前措置を講じるかは、それぞれの経営判断に任せられているのだとは思いますが、気になるのは国立大学法人の動きです。


先日、思わず目を疑う記事に出くわしました。


はしか対策、国立大で「格差」
《報道記事:読売新聞:3月17日付け》



な、な、なんと、すべて「国」が設置者であるはずの国立大学法人において、はしか対策に差があるというのです。


--ココから--
はしか流行シーズンを迎え、国立大学におけるはしか対策に「格差」があることが判明した。国主導の具体策がない中、予算や人手の不足に悩む大学にはしか対策を委ねる実態が背景にある。大学生で拡大した昨年のような流行再燃の懸念も浮上している。(科学部 本間雅江、木村達矢)

「大学生は大人。自己防衛して」
1人6000円
 東京大学本郷キャンパスにある保健管理センターの診察室には、はしかワクチンの接種を受ける学生が毎日40〜50人訪れる。先月から始まったワクチンの無料接種を受ける学生らだ。接種を終えた同大大学院修士1年の寺本慶之(よしゆき)さん(24)は「昨年の流行時は不安だったが、今年は一安心」と、ホッとした表情を見せる。これまで東大全体で1500人以上が接種。今年の新入生に対しては、抗体の有無などを確認した上で、学生負担での接種を継続する計画だ。

 上原誉志夫(よしお)・副センター長(内科医)は、「ワクチン接種は、1人6000円程度。徹底したはしか対策の一環であるが、本来は国がやるべきことで、大学にまかされても困る」と指摘する。

 一方で、「十分な対策がとれるのは、予算が潤沢な東大など一部の大学だけ」という声も多い。弘前大では、全新入生を対象に予定していた抗体検査を断念し、国の指導に基づき掲示板や文書などで自主的なワクチン接種を呼びかける手法に切り替えた。予算と人手が不足し、はしかシーズンが終わる夏までには対策が間に合わないというのが理由だ。本紙調査によると、同様に、注意喚起のみで具体策のない国立大学は4割にも上る。傾向は私大でも同じだ。

空白世代
 昨年、大学生の間ではしかが流行したのは、皮肉にも1990年代以降、国内患者発生数が減少したことが背景にある。ワクチンを接種しても、その後、はしかウイルスに接する機会がないと、獲得した免疫が徐々に薄れていくからだ。

 国内でもワクチンを接種した人がはしかを発症するケースが相次ぎ、国は2006年に従来の1歳時に加え、6歳で2回目のワクチン接種の機会を設けた。この対策から漏れた10代については、この4月から中1、高3で2回目接種を行うことにした。しかし、18歳〜20歳代は、どちらの対策からも漏れる「空白域」のまま。1回も接種していない人も多く、免疫保持率は他世代よりも1割ほど低い83〜87%しかない。

 「大学生は大人。各自で自覚を持って自己防衛してもらいたい」(厚生労働省結核感染症課)という国の方針のもとで、対策は各大学に委ねられた。2012年までにすべての10代で2回目接種が終了するという国の計画通りに事が運べば、大学入学者への対策は今年だけの臨時措置で済む。

 しかし、懸念材料は多い。6歳児の2回目接種率(2006年度)は8割以下と、集団感染を抑える目安となる接種率95%に遠く及ばない。今年から始まる10代での接種も、中学校、高校の協力頼りで、特に大学受験を控える高3で接種率を上げるのは難しい。

 こうした事情を考慮し、昨年4人の感染者が出た神戸大は、少なくとも今後4年、新入生全員に学生負担の抗体検査を実施することを決めた。兵庫県の小児の2回接種も約8割と低く、同大保健管理センターの馬場久光所長は「流行を防ぐには大学独自の対策の継続が欠かせない」と語る。

治療法なし
 ワクチンの接種率が伸びないのは、副反応などを理由に94年、集団接種から個別接種に切り替わったことがある。しかし、継続的にワクチンの安全性について調査している国立成育医療センターの加藤達夫総長は、「初回接種者の22%が発熱するが、致命的な副反応はほとんど発生していない」と語る。

 国立感染症研究所によると、はしかの感染力はインフルエンザの約6倍。免疫がないまま15歳以上で感染すると7、8割は入院するほど重症化する。昨年は脳炎など、後遺症が残る可能性がある患者も9人発生した。脳炎患者の死亡率は15%と高い。

 「はしかに有効な治療法はない。ワクチンのメリットにも目を向けてほしい」と加藤総長は力説する。

 患者発生の動向を探るため、今年から患者は全数報告される。今年に入り神奈川県などを中心に10代、20代にはしかが流行し、3179人(3月2日現在、感染研調べ)の患者が発生している。

 昨年の流行が完全に終息しないまま、流行シーズンを迎えようとしており、再びはしかが猛威をふるう恐れは高い。

 副反応:ワクチン接種によって期待される抗体値の上昇効果以外の反応。はしかの場合、発熱のほか、まれにけいれん(3000人に1人)や脳症や脳炎(100万〜150万人に1人)などが起こることがある。

「はしか輸出国」ニッポン
 海外で日本人がはしかの感染源となった例は昨年、米国を始め、カナダ、オーストラリア、スイス、台湾で相次ぎ、「患者を輸出した」と国際問題にも発展した。昨年8月、米国での野球大会に参加した小学生が現地で発症したケースでは、小学生が搭乗した米国内便で近くの席に座った米国人ら6人が感染した。

 米国、カナダ、韓国などはワクチン2回接種により、はしか集団発生の制圧に成功。その他の国でも2010年までにはしかを排除するという目標を掲げているが、日本の制圧目標は2012年と遅れる。制圧には、人口100万人あたりの患者数が1人未満になることや、2回のワクチン接種率がそれぞれ95%以上になることが必要だ。「はしか輸出国」の汚名返上へ、世界中から対策が注目されている。

--ココまで--


ということで、対応にばらつきが(しかもその原因はどうやら資金力格差)出ているようです。


憲法25条には
第1項:すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
第2項:国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。
とあるのですが、これは方便なのでしょうか?


確かに国立大学は独立行政法人化され、それぞれが「国立大学法人」として学長のリーダーシップのもとに新たな一歩を踏み出しています。
とはいうものの、国立大学法人は6年に一度の中期目標を文部科学省に提出する義務を負うなど、その性質はいまだ、以前の制度の枠内といってもよい状況がみられます。
このような状況であるとすれば、文部科学省は、自らの「設置者」としての力が及ぶ範囲である国立大学法人に対して、他の公立大学法人や学校法人への「範」として、進んではしか対策に取り組むべきではないでしょうか?
しかも、厳密な意味では設置者は「文部科学省」ではなくて「国」です。はしか対策は厚生労働省の管轄です、なんて逃げ口上はまっぴら御免です。

これで文部科学省は後に行われる点検・評価などの際に「自律的に危機への対応が行われていなかった」なんてコメントを出す気なのでしょうか。
「事後チェック」の履き違えもよいところではないでしょうか?
必要最低限については事前に確認するのが、調整・基盤整備者たる国家機構のするべきことではないのでしょうか。




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【今日(3月24日)は何の日】
壇ノ浦の合戦(1185)、徳川家康が征夷大将軍の宣下を受ける(1603)、桜田門外の変が起こる(1860)、金座・銀座が廃止される(1869)、コッホが結核菌を発見(1882)

【今日が誕生日】
新井白石(1657)、調所広郷(1776)、速水優(1925)、スティーブ・マックイーン(1930)、辻口博啓(1967)

【今日が忌日】
ハールーン・アッ=ラシード(809)、安徳天皇・二位の尼(1185)、井伊直政(1602)、エリザベス1世(1603)、井伊直弼(1860)、ハロルド・ラスキ(1950)



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posted by Tommy at 23:50| 東京 ☀| Comment(0) | TrackBack(0) | 大学一般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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