2008年05月17日

どうする?!専門職大学院


「専門職大学院」という制度、皆さんご存知でしょうか?


簡単にいえば「ロースクール(法科大学院)の設置根拠となっている制度」と言うことになるでしょうか。
実は、この表現、ある意味で不正確、ある意味で正確です。


というのも、法的な意味での専門職大学院は「大学院のうち、学術の理論及び応用を教授研究し、高度の専門性が求められる職業を担うための深い学識及び卓越した能力を培うことを目的とするもの(学校教育法第99条第2項)」となっており、そのドコにも「法科」の二文字は見当たらないからです。
むしろ、この制度自体は「高度の専門性が求められる職業」に関する「学術の理論及び応用を教授研究」するために発足したものです。
そのため、現在では法律系以外にも「経営・技術経営系」「起業系」「会計系」「公共政策系」「医療系」「教職系」「メディア・デザイン系」などの分野で「○○修士(専門職)」という学位を出す専門職大学院が設置されています。


ということで、法律系以外も制度上十分に想定され、また実際に設置されているので、最初の表現は「不正確」です。




ただ、ここからが問題。


専門職大学院が、いわゆる一般大学院との違うところ(設置上の特徴)は「専任教員に当該専門領域の実務家を置くこと(専門職大学院設置基準第5条第3項)」と「5年ごとに文部科学大臣から認証を受けた評価機関による評価(認証評価)を受けること(学校教育法第109条第3項)」が義務付けられているところです。

学校教育法(昭和22年法律第26号)

専門職大学院設置基準(平成15年文部科学省令第16号)


法律系については、事実上制度発足前から認証評価機関の設立が検討・準備され、実際に「日弁連法務研究財団」「大学評価・学位授与機構」「大学基準協会」の3つの機関が認証評価機関として文部科学省に認定され、評価を実施しました。

では、他の分野も同様に認証評価機関が設置されて云々、ということになるはずなのですが、どうやら「出来ていない」ようなのです。認証評価機関が。



専門職大学院 東北大など評価受けられず
《報道記事:河北新報:5月15日付け》


ここから記事----------

 文部科学相が認証した評価機関による第三者評価を5年に1度受けるよう義務付けられている専門職大学院のうち、東北大大学院(公共法政策専攻)、東大大学院(公共政策学専攻)など、公共政策や公衆衛生などを専攻分野とする10校が、その分野を担当する認証評価機関が存在しないため、期限となる本年度中に評価を受けられないことが14日、分かった。

 規制緩和の流れで大学や大学院の質保証は、設置認可を厳格に審査する「事前規制型」から、自己評価や第三者評価を徹底させる「事後チェック型」に移行したが、評価機関不在の事態で制度上の問題点が浮上、質保証の信頼性にも大きな課題を残しそうだ。

 これらの専攻分野に認証評価機関がないのは、法科大学院やビジネスなどの分野に比べ専門家が足りなかったり、大学院数が少なかったりするなどの事情がある。今春19校で始まった教職大学院も、現時点で評価機関が決まっていない。

 国公私立すべての大学などが認証評価機関から、教育研究の総合的な状況について評価を受ける制度は学校教育法などに規定され、2004年度にスタート。一般の大学院を含む大学は7年に1度、特に専門性の高い専門職大学院は専攻分野ごとに5年に1度の評価が義務付けられた。

 専門職大学院のうち法科大学院などは、大学基準協会や日弁連法務研究財団といった認証評価機関が評価を担当。3月には初めて「不適合」の厳しい評価を受けた法科大学院も出ている。

 一方、その分野の認証評価機関がない専門職大学院は、自己評価の内容を外部に検証してもらえばいいという代替措置も設けられたが、自己評価の内容や基準に法令上の規定がない上、「外部検証」も同じ大学の職員が行うことを禁じているだけで明確な定義はない。その結果、大学OBや利害関係者ら“身内”による検証も可能な状況だ。

 文科省は、認証評価機関の設立を要請する立場にないとした上で「自己評価や外部検証も、各大学の判断で適切に行われると考えている」としている。

◎認証評価機関がない10校
【公共政策】
・東北大大学院公共法政策専攻
・東大大学院公共政策学専攻
・早稲田大大学院公共経営学専攻
・徳島文理大大学院地域公共政策専攻
【公衆衛生等】
・京大大学院社会健康医学系専攻
・九州大大学院医療経営・管理学専攻
【その他】
・日本社会事業大大学院福祉マネジメント専攻(東京都)
・京都情報大学院大ウェブビジネス技術専攻(京都府)
・宝塚造形芸術大大学院デザイン経営専攻(大阪府)
・デジタルハリウッド大大学院デジタルコンテンツ専攻(東京都)

----------ここまで記事



ということで、第一弾の法科大学院については「国家事業」(司法試験制度と直接関係することから)の側面が大きかったため、手厚い配慮がなされていたわけですが、その後各大学がそれぞれの考え方・方針に基づいて設置した諸分野に関しては、「特に用意はございません。各自努力をしてください」という状況に置かれているのです。


そうはいっても、ある意味この事態は「想定されていた」事態でもあるので、学校教育法第109条第3項、すなわち認証評価を義務付けた条文において「ただし、当該専門職大学院の課程に係る分野について認証評価を行う認証評価機関が存在しない場合その他特別の事由がある場合であつて、文部科学大臣の定める措置を講じているときは、この限りでない」と、代替措置(逃げ道)が用意されています。

そして、この文部科学大臣の定める措置は、「文部科学大臣の指定する外国の国際的に認められた評価機関の評価を受け、その結果を公表し、文部科学大臣に報告すること」と「自己点検・評価の外部検証を実施し、その結果を公表し、かつ文部科学大臣に報告すること」とされています。


「外国の国際的に認められた評価機関」ということに関していえば、
公共政策分野であれば、
National Association of Schools of Public Affairs and Administration
公衆衛生分野であれば、
Council on Education for Public Health
の名前を挙げることも可能ですが、上記はいずれもアメリカのアクレディテーション機関であって、文部科学省の言う「国際的に認められた」になるかどうかは、やや疑問です。(文科省が言う「国際」が「アメリカ」とイコールかもしれませんけど)
しかも、上記記事で挙げられている「その他」に分類された分野では、そもそも対応する分野・機関そのものを見つけること自体が困難です・・・

しかも、これら機関に評価をしてもらうにしても、最低でも1年はかかるわけで、既に時間切れ。


アメリカに機関がある分野だけが「専門職」だ、とは思いませんが、自分たちが専門職を養成するとして定めた分野であるのならば、自らの手で認証評価機関の設立を支援するなど、何らかの努力をするべきではなかったのでしょうか。

このままであれば「自己点検・評価の外部検証を実施し、その結果を公表し、かつ文部科学大臣に報告すること」になります。

自己点検・評価はこれまでも実施してきたのでしょうから、それを外部検証してもらうというプロセスが新たに入ることになるわけで、これが「外部機関(=認証評価機関)」ではなく、大学院自身が「外部」と定義する人もしくは組織になるわけです。

しかし、この状態を許容してしまうということは、専門職大学院という制度そのものを否定しかねません。
専門職大学院は、制度として「事後の評価」を行うことで、その教育の質を担保しようとしているからです。

一般大学院より教員の基準が緩和されたからこその「事後での評価」であったはずで、それがある意味「お手盛り」になってしまうことは、結局は「普通より簡単に大学院が作れた」ということが専門職大学院制度の特徴だということになりかねません。




ひじょ〜に心配です。



認証評価機関がなくても教育の質が担保されていれば良しとするか(そうすると制度が揺らぐ)、専門分野別の認証評価機関がないと大学院の設置を認めないか(これでは事前規制に逆戻り)、難しいところです。

いったい、当事者たちはどう考えているのでしょうか・・・





追記:
なぜ、こんなにこの記事が長いかと言えば、私の修士論文のテーマがビジネススクールの認証評価の話だったからです・・・




追記2:
「その他」の各大学院、どんな専門職学位を出すのか、気になったので調べてみました。

設置校一覧(法科大学院を除く)(中央教育審議会・大学分科会:大学院部会(第37回)議事録・配付資料:資料4−2.2)

「management」という言葉を「有効活用」しそうな大学院もありますが、「おいおい、これって一般大学院の学位と何が違うんだ」って学位や「本当にどうすんの?」って感じの学位も・・・


・日本社会事業大大学院福祉マネジメント専攻(東京都)
 福祉マネジメント修士(専門職)
 Master of Social Service Management

・宝塚造形芸術大大学院デザイン経営専攻(大阪府)
 デザイン経営修士(専門職)
 Master of Business Administration in Design

・京都情報大学院大ウェブビジネス技術専攻(京都府)
 情報技術修士(専門職)
 Master of Science in Information Technology (M.S.in IT)

・デジタルハリウッド大大学院デジタルコンテンツ専攻(東京都)
 コンテンツマネジメント修士(専門職)
 The master of Digital Contents




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posted by Tommy at 23:58| 東京 🌁| Comment(0) | TrackBack(0) | 大学一般 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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